スリランカハイテク技術推進プラットフォームでは、スリランカのテック産業・企業の魅力を日本の企業様にお届けしています。今回は、経済情報プラットフォーム「Speeda」や経済ニュースプラットフォーム「NewsPicks」を提供する株式会社ユーザベース様にインタビューさせて頂きました。
ユーザベース様は2016年のスリランカ現地オフィス設立以降、長年に渡り現地で事業展開されており、現地ではデータベースの開発も行われています。今回は、同社Speeda 東南アジア・インド事業チーム所属のディレクター 廣瀬様に、同社のスリランカ現地拠点設立に至る当時の課題やニーズ、現状の具体的な取り組みから成果、取引のポイントまで貴重なインタビューをさせて頂きました。Fintechが有名なスリランカならでの視点も踏まえた同社のアプローチは大変参考になりますので是非ご一読ください。
事務局:
簡単に会社及び自己紹介をお願いします。
廣瀬氏:
株式会社ユーザベース Speeda 東南アジア・インド事業チームに所属しております廣瀬と申します。弊社では、企業の意思決定に必要な情報を集約した経済情報プラットフォーム「Speeda」や、厳選したニュースやオリジナルコンテンツを発信する経済ニュースプラットフォーム「NewsPicks」を提供しています。
「Speeda」は、他の情報プラットフォームと比較して、アジアの企業データや業界情報を幅広くカバーしている点を強みとしています。日本版に加え、シンガポール・マレーシア・タイ・ベトナムを中心とした東南アジア地域向けの「Speeda東南アジア版」、中国/香港/台湾といった地域向けの「Speeda China(思必达)」、そして新興産業やテクノロジー分野の洞察を提供する「Speeda Edge」があり、海外の現地企業や現地に拠点を置く日系企業の皆さまにも広くご活用いただいています。
海外向け「Speeda」が提供するサービスは主に3つあります。
- 企業情報や業界レポートにアクセスできるデータベースの提供
- お客様のニーズに合わせて調査レポートを作成するリサーチ代行サービス
- 専門家から直接知見を得られるエキスパートリサーチサービス
いずれのサービスにおいても、スリランカのスタッフが業務をサポートしており、Speeda独自のコンテンツや質の高いデータの提供を通じて、ユーザー企業様の情報収集・意思決定を支えています。ユーザベースは今年グローバル統括責任者を迎え、保有するデータやコンテンツを世界へ届ける体制を、一層強化していきたいと考えています。その中でスリランカ拠点は、Speedaのグローバル展開を支える存在として期待されています。
事務局:
当時、どのような背景や課題・ニーズがありましたか?
廣瀬氏:
スリランカオフィスは、日本語を母語としない海外の顧客に向けた調査サポートやデータベース開発を担うことを目的に2016年2月に設立されました。
Speedaのプラットフォームでは、財務情報やM&A情報などの企業データ、市場環境・競争環境・成長性などをクイックに理解するための業界レポートなど幅広く経済情報を提供しています。そのため、英語でのレポートの作成やリサーチに対応でき、かつ金融や投資に関する知識が豊富な人材の確保が必要でした。
ベトナムやタイなど東南アジア各国にも現地アナリストが在籍していますが、スリランカでは優秀な人材を比較的低コストで確保できるという利点がありました。金融機関に強いネットワークを持つ人材や、CFA協会認定証券アナリスト資格を持つメンバーも在籍しています。
事務局:
現地オフィス設立により、どのような成果に繋がりましたか?
差し支えない範囲で回答頂ければ幸いです。
廣瀬氏:
スリランカのメンバーで構成されたCustomer Success(CS)チームの業務の一つに「リサーチ代行サービス」があります。Speeda上でも情報検索は可能ですが、利用者がさらに深く情報を掘り下げたい際に、CSチームがご要望に基づき調査を行い、レポートや企業リストといった成果物を提供します。時間のかかるリサーチを代行することで調査時間を削減し、より意思決定に集中していただけるサービスです。
先日も、タイに拠点を置く銀行のリサーチ部門から半導体やデータセンター産業に関する調査の依頼をいただきました。米中の貿易摩擦や生産拠点の移転、先端技術分野の拡大といったメガトレンドを踏まえてチームが作成したレポートは、「市場の動向を理解するための包括的な情報がまとめられており、次のアクションプラン策定に有益で、期待を超える内容だった」と高い評価をいただきました。
Uzabase Sri Lankaは、彼ら自身で職場環境の整備や優秀な人材確保に取り組み、着実に成果を上げています。社員満足度調査で評価されるGreat Place To Work in Sri Lankaでは、小規模(100‐250人)部門で2025年に第1位を獲得。加えて「Best Workplaces for Young Talent」「Best Workplaces for Women」部門でも2024・2025年に表彰されています。
また、コロンボ大学との人材育成プログラム提携やCFAのインターンプログラムへの参画を通じ、若い人材の育成にも注力しています。Linkedinでも積極的に発信を行っており、現在7,000人以上のフォロワーを獲得しています。設立当初9名だったチームは、2025年9月時点で140名規模に拡大し、ユーザベースで最も大きい海外拠点になりました。
事務局:
スリランカで事業をするにあたり苦労された点はありますか?
有効なアプローチ・対策として何が考えられますか?
廣瀬氏:
スリランカのメンバーは若手や女性スタッフの比率が高く、内向的なメンバーも少なくありません。彼らとは普段オンラインでの打ち合わせが中心となり、直接顔を合わせる機会が限られているため、メンバー一人ひとりを理解する場を意識的に設けることが重要だと感じました。
例えば、東南アジアに携わるチームではその一環として、スリランカを含む海外拠点のメンバーを対象に、各自の資質を理解するための「ストレングスファインダー」オンラインワークショップを実施しました。
少人数のグループに分かれて発言してもらうと、それぞれの仕事への取り組み方や強みが明確になり、メンバーの声に耳を傾けて理解を深める機会を設けることの大切さを実感しました。
事務局:
最後に、スリランカテック企業との取引を検討されている日本企業へメッセージをお願いします。
廣瀬氏:
スリランカのスタッフは協調性が高く、向上心もあるので、一緒に働きやすく、信頼して業務を任せることができます。また、優秀な人材ほど「自身が成長できる職場環境」を求める傾向があるように感じます。
彼らがスキルを磨き続けられる環境を整え、チームとして良いプロダクトやサービスを作り上げていくことで、双方にとっての成功につながる理想的な関係を築いていけるのではないでしょうか。ぜひ多くの日本企業の皆さまにも、スリランカの人材と協働する魅力を実感いただければ幸いです。
インタビュイー:
Uzabase, inc.
Integrated Marketing & Engagement
ディレクター 廣瀬理紗氏