【顧客事例紹介】スリランカテック企業の魅力 – The360株式会社

スリランカハイテク技術推進プラットフォームでは、スリランカのテック産業・企業の魅力を日本の企業様にお届けしています。今回は、スリランカのテック企業と協業経験のあるThe360株式会社の取締役CTO/COO 髙橋氏にインタビューさせて頂きました。背景や事業課題、取引メリットから潜在課題、その解決策まで貴重な経験をシェア頂きました。


事務局:
簡単に会社及び自己紹介をお願いします。

髙橋氏:
The360株式会社の髙橋です。弊社は、システム開発、XR分野(メタバース、VR、AR)、プロジェクションマッピングなどの企画からディレクション、開発までをワンストップで手掛けるXR系のベンチャー企業です。ベンチャーではありますが、大手企業様や自治体様とのお取引実績も多数ございます。同時に、中小企業の皆様からの比較的小規模な開発に関するご相談にも、可能な限り柔軟に対応させていただいております。社内では技術統括責任者を務めており、技術的な知見を活かした開発提案や技術検証、技術者の育成に携わる一方、会社の規模もあり、自身でも開発の実務に加わっています。


事務局:

スリランカテック企業との出会いについて教えてください。
また、当時の第一印象はいかがでしたか?

髙橋氏:
弊社はシステム開発やXR分野(メタバース、VR、AR)の企画・ディレクションを行っておりますが、お客様のご予算内で開発コストを抑えるのが難しいケースや、開発に必要なUnity、3D制作といった分野で十分なスキルとコスト競争力を兼ね備えた人材が国内で見つからないという課題がありました。国内外で委託先を探す必要性を感じ、オフショア開発も視野に入れていたところ、以前から貿易関連のビジネスでお付き合いのあった貿易コンサルティング会社、Frontieer Japan合同会社の大谷氏よりSoftSora社を紹介いただきました。当時はAR組み込みや3D関連の技術者を探していたのですが、国内で見つけられなかった人材が本当にスリランカで見つかるのか、正直なところ半信半疑でした。

 

事務局:
当時、どのような背景や課題・ニーズがありましたか?

髙橋氏:
SoftSora社を紹介いただいた当時は、複数のお客様の開発案件をディレクションしながら、同時に自社が出展する大型展示会向けのインパクトあるARコンテンツも準備しなければならず、限られた人員と時間でこれら双方をこなす必要がありました。お恥ずかしながら、私自身も手一杯で、まさに猫の手も借りたいという状況でした。そんな折にスリランカ企業とのマッチングの話が舞い込み、まさに渡りに船と感じました。とはいえ、お客様の案件に、実力の未知数な海外企業をいきなり参加させるのはリスクが高いと判断しました。一方で、自社の展示会用ARコンテンツ制作であれば、まずは試せるのではないかと考え、半ば強引に社内を説得し、スリランカとの協業に踏み切った次第です。

 

事務局:
なぜ最終的に、そのスリランカテック企業との取引を決めたのですか?

実際のアプリ

髙橋氏:
決め手となったのは、先ほどお話しした自社展示会用のARコンテンツ制作を依頼した際、その成果物が期待値を大幅に上回る、非常に満足のいくものだったことです。最初にお願いしたのは、弊社のロゴを3D化し、名刺上で簡単なアニメーションを表示するARを制作するという、比較的小さな依頼でした。しかし、スリランカチームは、依頼内容をただこなすだけでなく、「どうすればもっと良くなるか」を主体的に考え、ロゴ型の魔法陣から3Dロゴが出現する演出や、名刺上のARに表示されるポータルを通過すると360°空間が広がるといった、こちらの要求水準を満たした上で、さらに付加価値の高いアイデアを積極的に提案・実装してくれたのです。

その後、クライアントワークも含めていくつかの案件で協業する中で、彼らが単に受託開発スキルが高いだけでなく、優れた提案力と主体性を兼ね備えたチームであることを確信しました。加えて、弊社はXR、つまり3Dデータを仮想空間や現実空間に投影するコンテンツを扱っており、技術力と共に3Dデザイン能力も不可欠なのですが、スリランカチームはその両方を高いレベルで保有していた点も、パートナーとして魅力的でした。

 

事務局:
取引により、どのような成果に繋がりましたか?
差し支えない範囲で回答頂ければ幸いです。

髙橋氏:
スリランカチームとの協業は、もうすぐ2年になります。主に私がディレクションを担当し、スリランカチームが開発実務を担う体制で、ARフィルター開発をはじめ、大手飲料メーカー様や家電メーカー様のプロモーション用AR案件、生成AIを活用したチャットボットシステム開発などに共に取り組みました。現在も、不動産関連システムや士業向けシステムの開発案件などが進行中です。案件化前の技術検証などにも協力してもらうこともあり、今では最新技術に関する知見を国境を越えて共有し合える、非常に頼りになるパートナーです。端的に言えば、スリランカチームとの連携があるおかげで、従来であれば納期やコスト、技術リソースの面で受託が難しかったであろうプロジェクトも、積極的に引き受けられるようになりました。オフショア開発というと納期が延びるイメージを持たれるかもしれませんが、彼らの場合はむしろ、十分な開発体制を組むことで、短納期かつ低コストでの開発実現に繋がり、会社経営の観点からも大きな助けとなっています。

 

事務局:
スリランカテック企業との取引で苦労された点はありますか?
有効なアプローチ・対策として何が考えられますか?

髙橋氏:
よく懸念されるコミュニケーションについてですが、私自身、英語の読み書きはできても会話は苦手なため、微妙なニュアンスまで正確に伝えるには、やはりブリッジSEを介するのが望ましい場面もあります。ただ、日常的なやり取りの多くはWhatsAppやSlackといったチャットツールで行っており、英語の読み書きができれば、コミュニケーションで大きな支障が出ることは少ないと感じています。一方で、2Dや3Dのデザインに関しては、日本とスリランカとで感覚的な違いから認識のずれが生じやすい側面があります。これについては、指示内容を可能な限り図や文章で具体的に、かつ明確に伝えることで、齟齬が生じるリスクを低減させています。


事務局:

最後に、スリランカテック企業との取引を検討されている日本企業へメッセージをお願いします。

髙橋氏:
私たちのような国内のテック企業にとって、信頼できる開発パートナーの存在は極めて重要です。特に、技術の進化が目覚ましいIT業界では、最新技術を迅速にキャッチアップし、アウトプットに繋げるスピードが競争力の源泉となります。その点、スリランカチームは非常に意欲的で、最新情報を貪欲に吸収し、真摯に私たち日本のクライアントに向き合ってくれます。現在、「この領域はスリランカチームに任せられる」という選択肢があることは、弊社にとって大きな強みです。もし、この記事を読んで「自社もスリランカ企業の力を借りたいかもしれない」と感じられた日本の企業様がいらっしゃいましたら、ぜひ一度、まずは小さなプロジェクトからでも「一緒にやってみないか」と声をかけてみることをお勧めします。多少のリスクは伴うかもしれませんが、そうした主体的な一歩が、国境を越えた信頼できるパートナーシップに繋がる可能性があります。


インタビュイー:
The360株式会社
取締役CTO/COO 髙橋 颯氏